初体験だらけの撮影現場

撮影はどんどん進んでいく撮影が始まったところからの続き。
アダルトビデオの撮影に臨んだわけだが、現場の撮影は初めての経験ばかりで、内心緊張しっぱなしだった。
周りは私の心理状態などおかまいなしに、確実に撮影は進んでいった。

緊張しているのか、相手に申し訳ない気持ちが強いのか理由はわからないが、最初は強ばっていた気持ちと体も、相手の男性の優しい接し方のおかげか次第にほぐれていった。

インタビューを受けながら少しずつ、相手の男優さんに体を優しく触れられていき、私の体はどんどん熱くなっていった。
その後は頭がボーっとしてきて夢なのか、現実なのか、よくわからないフワフワした状態だったと思う。
初めて男性に触れられてどうしていいのかわからなかったのだが、「デブでも女性なのだ」って思えるほど、内面からの女性の喜びという気持ちがどんどん高揚してくるのがわかった。
そして、男性の優しいリードのおかげで私は特に痛みを感じることもなく初体験を終えたのだった。

行為の最中は、あんなに気になっていた周りのスタッフの視線も気にならなくなって、相手の男性のことしか見えなくなった。
そうして1回目の撮影は終了。
私が初体験だったこともあり、撮影は後日休養を取って、別のロケでやる説明を受けてその日は解散ということになった。

アダルトビデオの撮影を日常的にこなしているスタッフさんはテキパキと片付けを始めたが、私はしばらく動けなかった。
「落ち着いたら、用意した軽食を取っていいよ」と言われたので、食欲も戻ってきたころにスタッフさんを横目に食事を取り始めたのだが、已然頭はボーっとしたままだった。

最初は緊張して名前も覚えられなかった男優のユウキ君(仮名)が、撮影後も気を使ってくれているのか「痛くなかった? 大丈夫?」と、私の体を気遣ってくれたので徐々にだが、気持ちも落ち着いていった。
こうして私はついに処女を卒業したのだった。

いままで放棄してきた女性の喜び

撮影が始まったところからの続き。
もともと、知名度も何もない自分のような女は「企画モノ」として扱われるとプロダクションの人には聞いていた。
しかし、デブの処女喪失シーンは業界的にも珍しかったらしく、今回の撮影は「単体扱い」ということになり、総額で30万円と当初のギャラよりも多くもらえることになった。

最初の面接に行った時にお金に困っているという話をプロダクションの担当者にしていたので、とりあえず1回目の撮影が終わると10万円を前金としてもらうことができた。
時間にして4時間くらいだっただろうか?
こんな短時間でこんな大金を貰えことに驚いた。
そして、いままでデブというコンプレックスのかたまりとしてしか見てなかった自分の価値を報酬という形として貰えたことで「私は無価値な人間ではなかったのだ」と素直に嬉しかった。
なんだか今まで感じていた劣等感が少し無くなって、体も軽くなったように感じたのだった。

それとは別に、新たな感覚を持つようになった。
もともと風俗で働こうと求人サイトを見たが、到底自分は働けないとすぐさま断念した。
そのまま興味本位だけでサイトを見ていただけの私。
SEXに対してもマイナスイメージしかなかった私が、ゴミを捨てるように処女を捨ててやるとヤケになって、プロダクションに応募した。
そんな私がだ、イケメン男性に一人の女として扱われ、初体験を終えることができたのだ。
男優と女優という関係だが、擬似的にも恋愛関係を経験することができた。
そう、同年代の女性が持つ、女として生まれてきた本当の喜びをようやく感じた瞬間だった。

その日の帰りは大好きな焼き肉をその日稼いだギャラでたくさん食べて帰った。
心も胃も満たされた、その日の出来事は今でもよく覚えている。